近年は災害が多発し、そのたびに福祉施設での避難の在り方が取りざたされます。
毎回言われることが
・避難させなかった職員が悪い
・福祉施設は避難できないのだから仕方ない
上記2点は事実なのでしょうか?
海辺や川沿いの福祉施設に現場職員として勤務した経験から解説します。
福祉施設では避難は行わないのか?
まず最初の誤解を解く必要があるのですが、
福祉施設でも避難します。
施設に留まれば命の危険があるのですから、避難は想定されています。
しかし、そのハードルが学校等と比べると非常に高くなっているために避難を行うことが少なく、避難しないイメージがあるのではと推察します。
職員が決断し避難させないのか?
残念ながら現場職員レベルでの決断で避難は出来ません。
面倒とか責任を取りたくないということではなく物理的に不可能なのです。
避難には相応の準備が必要
福祉施設にて避難を行う場合は事前の準備が必要になります。
なぜならば自力で避難できない方が多いからです。
そして認知症の方の場合は避難先にてご利用者様を待機させる職員が必要です。
移動のための人員
自力で歩行できる方もいらっしゃいますが、車椅子の方は当然押す人員が必要です。
夜勤などでは数十人のご利用者様に対して1人の職員しか居ない場合もあるので、避難は非常に困難です。
施設に危険が迫り、避難せざるを得ない時点で避難開始では間に合いません。
避難所に配置する職員
こちらは施設によっては不要な場合もあります。
ご利用者様の中には、認知症の方も多く、目を離すと危険な行動を取る方もいらっしゃいます(自宅に戻ろうとする、何でも食べる、危害を加える等)
混乱した中でピストン輸送によってご利用者様を避難させる場合は、ご利用者様を良く知る職員を残さなければ二次災害の危険性が高まります。
避難の基準はマニュアル化されていることが多い
大雨
東日本大震災以降はハザードマップの整備が進み、大雨時の浸水場所が分かります。
また浸水する高さも分かるので施設の建物によって対応を考えることが出来ます。
大雨は事前に予報が出るため、対応への余裕はある災害と言えるでしょう。
例:
浸水が5m想定のの場所に立つ3階建ての施設ならば、浸水時に3階にまで移動すれば安全。特別警報が予想される場合は人員を増やして移動をスムーズに出来るように準備する。
浸水が20m想定の場所に立つ、平屋の施設ならば浸水に耐えられない。大雨特別警報が予想される場合は職員を出来るだけ集め、避難が体調に影響しないご利用者様を先に非難させておく。残りのご利用者様も一斉に非難する体制を整え、特別警報が出た時点で全員避難する。
地震
地震は突然来るのでしっかりと、対応を周知しておかないと問題が発生します。
建物自体は基準が厳しく、検査も行っているため震度7であろうと1回で倒壊することは少ないです。しかし、津波の恐れがある場所は生死を分ける事態となってしまいます。
特に津波に関してはハザードマップが公開されているので、浸水度合いは分かります。
また、ハザードマップと比べて想定外の津波が来た場合の対応も決めておきます。
例:
震度5以上の地震発生時点で業務を中断し、建物の損傷をチェックする。並行して津波の恐れがある施設はTVやラジオで情報を収集しつつ避難準備。施設に重大な損傷や津波が施設へ到達の恐れがある場合は避難を行う。
火事
火事については施設内で出火した場合と、周辺の火事に分けられます。
施設内の火事については基本的には強力なスプリンクラーが設置してあるため、初期消火で済むことが多いです。消火訓練もかなり細かくやっていますので発見が早ければ昔のような大火事にはなることは少ないでしょう。
周辺の建物や草木の火事については、施設としてどうしようもありませんので消防の指示を仰いで必要とあらば避難します。
例:近くにある工場より出火し、延焼する恐れがある。近隣の職員に連絡するなど人員を確保し、避難の準備と行政の判断で避難を行う。
まとめ
昔の老人ホームなどは危険な立地、海辺・川沿い・山奥等にある場合も多いです。
しかし、現在ではハザードマップの公開により危険性の把握が容易となっています。
そんな中で、災害を過小評価している施設も多くありました。
ハザードマップでの浸水予想に耐えれない施設なのに、避難を想定していない施設もあるのです。
・最大20メートル浸水するのに、ご利用者様を全員2階に上げるというマニュアル。
・マニュアル改定を嫌がる、防災係。何故か代わりにマニュアル修正。
・避難が必要になったら手伝いに来るからマニュアル不要と言う管理者。
恐ろしい施設もありましたが、幸い私が勤務した施設では避難に至る災害はありません。
全国で起きた大きな災害後は何故か職員が奮闘した美談になったりしています。
確かに職員は頑張りましたが、そこに至った経緯が不思議でなりません。
結論として私の考えは
職員の独断で避難は難しい、会社(法人)がしっかりとマニュアルを作成していれば避難は可能。
という考えになります。
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