近年は車の安全装備について注目が集まっています。
ドライブレコーダーによって記録された、あおり運転や自動車・自転車・歩行者の無謀な行動が映像としてニュースで流れることはもはや日常です。
そして高齢者の踏み間違い事故によって色々な場所に突っ込んだ車も日常的です。
そして介護施設の送迎中の事故に死傷者も後を絶ちません。
現在は自動ブレーキの搭載義務化が進んでいます。
バス(12トン以上)は2016年11月以降発売開始から義務化。
乗用車も2021年11月以降販売開始から義務化されます。
色々な安全装備は義務化されてから導入(強制的ですが)すれば良いのでしょうか?
メリット・デメリットを考えます。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)
カメラやレーダー等を用いて、人や車(物)との衝突前に自動でブレーキを掛けます。
ここで注意したいのはあくまでも自動でブレーキをかけるだけです。
ぶつかることを完璧に防止するシステムではありません。
しかし、人間では反応できないタイミングでも機械は反応できます。
他の車にぶつけられて横断歩道の子供を自分の車で引いてしまった事故がありましたが、自動ブレーキ搭載ならば被害を軽減できたかもしれません。
メリット
職員・ご利用者様の被害を無し、軽減できる
高齢のご利用者様は持病がある方がほとんどです。女性の場合は骨粗しょう症で骨が脆い方も非常に多数となっています。
反射神経も大幅に衰えているので、防御姿勢を取ることも遅れます。
また、怪我からの回復も高齢者は難しいことが多く、元の生活に戻れないことも少なからずあります。
ご利用者様の命や体を守れる確率を大幅に上昇できることは大きなメリットです。
事故時の心理的ダメージの軽減
デイサービスなどでは毎日送迎を行います。
そして車を運転する以上事故は避けられません。
例え相手側に大きな過失があったとしても、自分の運転する車で人を傷つけてしまうと心理的なダメージは大きく運転に拒否感が出てしまいます。
自動ブレーキがあれば、事故を未然に防ぐことも可能ですし、相手側の被害も軽減できるでしょう。
その結果として職員の心理的ダメージを減らすことができます。
ドライバーの健康状態にも対応できる
送迎車のドライバーをコストの高い介護職員よりも、コストの安いシルバー職員に任せる事例も増えています。
もちろん、施設としても運転の適性を見てから任せていますので普段通りであれば特に問題ありません。
しかし、介護職員も同乗のできない場合の送迎はご利用者様を含めて全員70歳以上であったりするのが実情です。
もし万が一、ドライバーに異常があった場合に即対応できる人員は居ないのです。
自動ブレーキはそんな万が一でも被害を軽減してくれるかもしれません。
デメリット
車両によってはオプションでも取り付けられない
福祉車両においても自動ブレーキ搭載車両が大幅に増えています。
しかし、まだまだ未搭載車種、モデルによっては搭載できない福祉車両も多いです。
2021年の義務化はあくまでもそれ以降に販売開始された車両が対象となるので、しばらくは施設が自らの意思で搭載車両を選択しなければなりません。
費用が高い
カメラやレーダーの搭載が必要となり、基本的に後付けは出来ません。
また、オプションという選択肢があることは少なく、グレードによって搭載していることがほとんどです。
グレードを上げるということは色々な装備が強制的に付いてきますので数十万単位でのコストアップとなってしまうことが多いです。
ドライブレコーダー
一般の車でも搭載が非常に増えている車載カメラです。
現在は車両の前後を録画できる前後録画タイプが主流となりつつあります。
これは近年の問題であるあおり運転の問題に対応するためには、前方録画型ドライブレコーダーでは証拠不足の面もあるからです。
しかし、カメラが2台となるため当然価格も高くなります。
また1つのカメラで360度録画できるタイプもあります。
こちらは丸いレンズで全方位の状況を録画でき、車内の様子もわかります。
特殊なタイプのためお値段はかなり高めです。
メリット
事故の正確な情報が分かる
事故時の詳細が分かることにより、責任が明確化されます。
基本的に送迎車は安全運転をしていることが多く、相手側の過失が大きいことが大半です。しかし、相手側はなかなか非を認めない・理屈が通じないことも少なからずありました。
あおり運転を避けることができるかもしれない
送迎車は基本的に制限速度以下で走っています。
体が弱いご利用者様が乗車中は振動を避けるためにさらに低速で走ることもあります。
追い越して貰える道の場合は車を寄せて追い越してもらうのですが、ごく稀にあおり運転をしてくる車に出会うこともあります(対向車がいたり、見通しが悪い道では当たり前ですが先に行ってもらうことはありません)
ドライブレコーダーで録画中であることを示せば、あおられることが減るかもしれません。
車内の状況がわかる
ご利用者様の中にはセクハラや暴力をはたらく方もいらっしゃいます。
なかなかご家族が認めない場合もあるのですが、映像として残れば間違いありません。
ご利用者様の正確な情報を入手することに役立ちます。
デメリット
職員・ご利用者様のプライバシー侵害の恐れ
職員の中にはドライブレコーダーの搭載を嫌がる人はいます。
運転中の音声も録音されていますし(音無しにもできますが、ドライブレコーダーの意義は半減します)通った道も分かってしまうからです。
私も車内で歌を歌ったり、必ずしも最短ルートを通らなかったりするので人に見られたくない気持ちはあります。
ドライブレコーダーの中にはパスワードや暗号化によって映像を見れる人間を限定できる機種があるので、そういった機種であればプライバシー漏洩の危険性は低下します。
まとめ
安全装備付きの車両は職員とご利用者様に大きなメリットをもたらします。
しかし、何ごとも起きなかった場合は無駄な経費と言われかねないものでもあります。
法人としての名誉を守り、継続的に発展していきたいという考えの施設には、是非導入していただきたいのでご一考お願いいたします。
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